人の言葉の説得力は、理由があるかないかで決まる。たとえその理由が意味の無いものだとしても。
話し言葉だけではなく、広告などの文字でもこの法則は当てはまります。
人は理由(らしいもの)が無いと、その話の信憑性を疑います。そして理由(らしいもの)があると、その話を概ね信じてしまう。というものです。
意味の無い値下げ
例えば、こんな経験ありませんか?
・定価の値段から半額以下に値下げされた商品を見つけて、「何か怪しいな」と思って結局買わない
・”円高還元につき”と書かれて、定価から半額以下に値下げされた商品を見つけて、「こんなに安いなら」と買っていく
※半額以下はそんなに経験が無いかもしれませんが、2〜3割引きでしたらどうでしょうか?
どちらのケースも同じ割引額で販売しているのに、一方は「怪しさ」を感じ、もう一方は「お得感」を感じる。2つの違いは一方に”円高還元につき”という理由が添えてあったかどうかだけです。
これが”理由によって動かされる”ということです。
正当な理由でなくても動いてしまう
先ほどのケースでは”円高還元”と言う、輸入品を扱っているお店では正当な理由のように見えます。
が、実際円高でそのお店の仕入れが安くなっているのかは、お店の中の人たちでしか知り得ないのです。円高で仕入れ値が安くなっていなくても、この理由って使えてしまうんです。
もっととんでもないものを理由に見せて人を動かした例を紹介します。
心理学者のロバート・チャルディーニの著書『影響力の武器』の中で紹介されている、心理学者のエレン・ランガーの実験です。
図書館のコピー機に並んでいる行列に割り込んで、先にコピーを取らせてもらう。という実験で、
割り込む際の頼み方を3パターンつくり、それぞれで割り込みがどれだけできたかをまとめたものです。
それぞれの頼み方はこうです。
- すみません・・・5枚だけなんですけど、先にコピーを取らせてもらえませんか?
- すみません・・・5枚だけなんですけど、先にコピーを取らせてもらえませんか? 急いでいるので
- すみません・・・5枚だけなんですけど、先にコピーを取らせてもらえませんか? コピーをとらなければならないので
1番は理由なしでの依頼です。2番は理由付けての依頼。そして、3番は理由のようには思えないけれど理由の様に付けての依頼になっています。
結果
1番は60%の人が順番を譲ってくれました。そして2番は94%の人が順番を譲ってくれました。
理由の有無が結果に影響したと言える数字になっています。
さて、面白いのは3番の結果です。
「すみません・・・5枚だけなんですけど、先にコピーを取らせてもらえませんか? コピーをとらなければならないので」
と言われた人のうちどれだけの人が順番を譲ったのか?
なんと、93%の人が順番を譲ってくれたのです。
人は理由によって動いたのではなく、「〜なので・・・」という言葉で動いたという結果になります。
日常でも使われる「〜なので・・・」
お店での”円高還元”や”ワケ有りにつき”での値下げの他に、日常的にも使われています。
そして、その理由は実は正当なものではないかもしれません。
例えばこんな場合。
週末に草野球の試合に出ないかと誘われて
「最近、運動していないから、久しぶりに運動したいな。行くよ。」と答えることもあるでしょうし、
「最近、運動していないから、やめておくよ。」と答えることもあるでしょう。
答えの信憑性をあげるために、何かしらの理由を付けることを無意識で行っているのでしょう。
まとめ
「〜なので・・・」といった理由を付けられた言葉は説得力が増して、人を動かす力が増す。
人を動かしたい言葉を使いたい場合は、何か理由を付ける。
理由が見つからなかったとしても、「コピーを取らないといけないので」といったものでも良い。
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